東京高等裁判所 平成7年(行ケ)148号 判決 1997年3月13日
原告 サノフィ
原告補助参加人 第一製薬株式会社
被告 大原薬品工業株式会社 外5名
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用のうち補助参加によって生じた部分は補助参加人の負担とし、その余は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告のための附加期間を90日と定める。
事実
第1当事者が求める裁判
1 原告
「特許庁が平成4年審判第19427号事件及び平成4年審判第19836号事件について平成6年12月28日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決
2 被告ら
主文1、2項と同旨の判決
第2請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
原告(審判被請求人)は、名称を「血液泥化によって誘発される疾病用治療剤」とする特許第1072819号発明(昭和51年12月28日特許出願(1976年1月2日フランス国においてした特許出願に基づく優先権主張)、昭和56年4月18日出願公告、昭和56年11月30日設定登録。以下「本件発明」といい、本件発明の特許を「本件特許」、本件発明の日本国における特許出願を「本件特許出願」という。)の特許権者である。
被告(審判請求人。以下同じ)大原薬品工業株式会社、同東和薬品株式会社、同ソルベイ製薬株式会社は平成4年10月14日、本件特許を無効にすることについて審判を請求し(平成4年審判第19427号)、被告菱山製薬株式会社、同メディサ新薬株式会社、同大興製薬株式会社は平成4年10月23日、本件特許を無効にすることについて審判を請求し(平成4年審判第19836号)、両事件は併合して審理された結果、平成6年12月28日、「特許第1072819号発明の特許を無効とする。」との審決がなされ、その謄本は平成7年2月9日原告に送達された。なお、原告のための出訴期間として90日が附加されている。
2 本件発明の要旨
次式:
式……別紙A
(式中Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Rはフェニル基;ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基及びメチレンジオキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1つの置換基で置換されたフェニル基;ハロゲン原子で置換されたスチリル基;ハロゲン原子で置換されたチエニル基;ベンズヒドリル基を表わし、R1は―CH2―、―CH2CH2―、を表す。)で表されるピリジン誘導体またはこれらの治療用に投与し得る第四アンモニウム誘導体若しくはこれらの治療用に投与し得る酸付加塩からなる血液泥化によって誘発される疾病用治療剤
3 審決の理由の要点
(1) 本件発明の要旨は、特許請求の範囲に記載された前項のとおりのものと認める。
(2) 被告らは、本件発明は、本件特許出願前に国外及び国内において頒布された「THROMBOSIS ET DIATHESIS HAEMORRHAGICA JOURNAL OF THE INTERNATIONAL SOCIETY ON THROMBOSIS AND HAEMOSTASIS VOL.XXXIV,1975」(トロンボシス アンド ダイアテーシス ヘモレージカ トロンボシス アンド ヘモスタシス 国際学会雑誌 第35巻 1975年)の342頁所載の抄録87(以下、「引用例」という。)に記載された発明と同一であるので、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法123条1号の規定により無効とすべきものであると主張する。なお、引用例は、平成4年審判第19836号において提示されたものが大阪大学に昭和50年12月11日に受け入れられたことが認められる受領印が押されていることからみて、本件特許出願前の同日にわが国においても頒布されたものであることが認められる。
引用例の記載内容は次のとおりである。
「J.C.フェラン、D.オーベルト、B.ラケイズ、O.ペビン、J.J.セバルト(パルコール、研究開発部、ツールズセデックス F31023、セントレ ホスピタリア インターコロニアル デ クレテイル):血小板凝集抑制、抗血液泥化及び抗血栓特性を有する新しい薬剤、チクロピジンの生体内の作用
チクロピジンは動物実験において、血小板凝集を有意に抑制することが証明されている新しい一連の合成化合物に属する。ラットに経口投与したところ、ADP及びコラーゲンによって誘発される血小板凝集を著しく抑制した。その作用は単独投与後2~6時間で現われ、24時間持続した。硫酸プロタミン注射によりラットで誘発された血液泥化及び血行停止は、チクロピジンを静脈内投与後、5分以内に完全に消滅した。この化合物をあらかじめ経口投与しておいた動物にはいかなる泥化形成もみられなかった。チクロピジンの抗血栓作用はデンタルブローチを腹部大動脈に差し込むラットにおける実験で証明された。対照動物では局部的に白色の血栓が見られたが、あらかじめ投与しておいた動物には全く或いはそれほどひどくは見られなかった。ヒトにおける最初の治験では毎日1gの投与でADP誘発凝集に対してチクロピジンの抑制効果が、充分に現れるのに24時間~48時間要し、5~6日の治療後プラトーに達することが証明された。」(平成4年審判第19836号において提示にされたものの訳文による。)
引用例掲載の「チクロピジン」は、化合物名:5―(2―クロロベンジル)―4、5、6、7―テトラヒドチエノ―[3、2―C]ピリジンの一般名であり、その構造式が
式……別紙B
であることは、平成4年審判第19427号において提示された「CLINICAL PHARMACOLOGY and THERAPEU―TICS Volume18 Number4」(1975年)の485頁ないし490頁(特に、485頁左欄5行ないし7行、486頁左欄Fig.1。以下「甲第3号証文書」という。なお、本判決において摘示する書証番号はすべて本件訴訟におけるものである。)に示され、血小板凝集抑制剤として用いられる化合物であることが記載されている。
(3) 本件発明と引用令の記載事項とを対比すると、本件発明の前記一般式で示される化合物の具体例として、明細書の参考例1に、化合物名:5―(2―クロロベンジル)―4、5、6、7―テトラヒドロ―チエノ―〔3、2―C〕―ピリジン塩酸塩が示されており、さらに同化合物の抗血液泥化作用の試験結果が表I~III に示されており、同化合物は、甲第3号証文書の記載を参照すれば、引用例記載のチクロピジンの塩酸塩であって、本件特許出願前に公知の化合物であることは明らかであり、引用例記載の「硫酸プロタミン注射によりラットで誘発された血液泥化及び血行停止は、チクロピジンを静脈投与後、5分以内に完全に消滅した。この化合物をあらかじめ経口投与しておいた動物にはいかなる泥化形成もみられなかった」との記載は、チクロピジンが本件発明の血液泥化によって誘発される疾病に対する治療剤であることを示しているものとみることができるので、両者は、化合物チクロピジンを血液泥化によって誘発される疾病治療剤とする点で一致しており、異なるところがないので、本件発明は、引用例記載の発明と認められる。
(4) これに対し、原告は、引用例は本件発明の発明者の意に反して発表されたものであるので、特許法30条の新規性喪失の例外の規定及びパリ条約の優先権制度と内外人平等の原則からして、本件発明は引用例によっては新規性を喪失するものではないと主張する。
すなわち、原告は、本件発明の発明者であるアルマンド・アムセルムの「私は、1975年7月21日~26日にフランス国パリで開催された「スロンボシスおよびヘマトシス」第5回学術会議において該出願の特許請求されている発明が発表され、その要旨が1975年9月30日に発行された「スロンボシス アンド ダイアテーシス ヘマモージカ」第34巻第1号342頁に公表されたことを知らされた。私はその試験を依頼はしたが、この発表は、私の同意なしに、また、私の知らないうちになされたものである。」との宣誓書と、同宣誓書が本件発明の特許権者エルフ サノフィの被用者であり同会社の弁理士であるジャクリーヌ ラフォレストの面前で署名されたことを同人が宣誓する公証人により認証された宣誓書(甲第4号証文書)を提出して前記の主張をするとともに、特許法30条に規定する6月以内にフランス国に出願しており、パリ条約による優先権を主張しているならば、特許法30条2項の「特許出願」という要件についても「優先権主張の基礎となった特許出願」とみるべきであると主張し、「判例タイムズNo. 288」277頁ないし281頁(甲第5号証文書)及び「判例時報691号」129頁ないし136頁(甲第6号証文書)を提示し、さらに平成6年10月31日付け上申書を提出し、引用例の発表者4名のうち2名の、引用例による本件発明の発表は本件発明の発明者の同意を得ずに、その意に反してなされたものであることを宣誓する書面(甲第8号証文書)を提出している。
(5) 原告の主張についてみると、甲第4号証文書及び甲第8号証文書の内容からみて、引用例による前記の講演要旨の発表は、本件発明の発明者の意に反してされたものと一応認められる。そして、引用例の記載事項が、本件発明の発明者が甲第4号証文書で認めるように、1975年7月21日~26日の学術会議に同講演要旨として発表されたものであったとしても、本件発明のフランス国における特許出願は前記のとおり1976年1月2日になされ、確かに6月以内に出願されているが、本件特許出願は前記のとおり昭和51年(1976年)12月28日であって同発表の約1年5月後であり、特許法30条2項の規定に基づく6月以内には出願されていない。
パリ条約4条による優先権に関し、同条Bの「A(1) に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は、その間に行われた行為、例えば、他の出願、当該発明の公表又は実施……によって不利な取扱いを受けないものとし、また、これらの行為は、第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。」との規定は、第一国出願と後の国への出願の間の公表等により、後の出願が不利な取扱いはされないことを規定するものであって、第一国出願日前の公表についてまで優先権の該効力が及ぶことを規定するものではない。さらに、本件特許の第一国出願が前記のようにフランス国特許法の新規性喪失の例外の規定を満たしていたとしても、これをもって我国においても同様に新規性喪失の例外の規定を満たしているものとして取り扱わなければならないことまで、パリ条約2条1項の内国民待遇の規定は定めるものではない。甲第5、第6号証文書に示される事例は、本件とは事例を異にするので、何ら本件事例の参考になるものではない。
そうすると、特許法30条2項の規定に基づく特許出願は、国内外人の国内外での意に反する発明の公表のいずれについても、我が国に6月以内にされていなければ同規定の適用を受けることができないものと解されるべきものであり、原告の主張はいずれも採用することができないので、原告が主張するように引用例における発表が意に反するものであったとしても、本件特許出願は、同公表に対して特許法30条2項に規定する要件を満たすものとは認められないものである。
(6) 以上のとおりであるので、本件特許は、特許法29条1項3号の規定に違背してされたものであり、同法123条1項1号の規定により、無効とすべきものである。
4 審決の取消事由
審決の理由の要点(1) ないし(4) 、及び、本件発明がその特許を受ける権利を有する原告の意に反して引用例に発表されていたこと、並びに、本件発明がその発表から6月以内にフランス国において特許出願されたが、本件特許出願は同発表の約1年5月以後になされたことは争わない。しかしながら、審決は、特許法30条2項及びパリ条約2条、4条の規定の解釈を誤った結果、本件発明の新規性を否定したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。
(1) 本件発明については、審決認定のとおり1976年1月2日にフランス国において特許出願がなされており、この特許出願が、本件発明が原告の意に反して特許法29条1項3号に該当するに至った日から6月以内であることは明らかである。
そして、原告は、本件特許出願に際し、上記フランス国における出願に基づく優先権を主張し、これが認められているのであるから、本件発明の日本国における特許出願は、優先権の基礎となる1976年1月2日にしたものとして、特許法30条2項の規定の適用を受けることができると解さなければならない。
(2) パリ条約4条に規定されている出願手続に関する優先権制度は、同条約2条に規定されている「同盟国の国民に対する内国民待遇」の原則の最も重要な柱である。
本件発明について、原告が、優先権の基礎となる1976年1月2日に、仮に日本国において特許出願をしたならば、特許法30条2項の規定の適用を受けられることは疑いの余地がない。したがって、原告が最初にフランス国において特許出願をし、その後に日本国において出願をしたことを理由に、フランス国の法人である原告について特許法30条2項の規定の適用を否定することは、同盟国の国民に対する内国民待遇を否定し、優先権制度の趣旨を覆滅するものにほかならない。
(3) 発明がその特許を受ける権利を有する者の意に反して公表された場合に、専ら保護されなければならないのが特許を受ける権利を有する者であることは当然であるうえ、発明が意に反して公表されることはその特許を受ける権利を有する者には全く予想しがたい事態であるから、たとえ公表されても直ちにこれを知りえないのが通常である。したがって、特許を受ける権利を有する者自身が発明を公表した場合に関する特許法30条1項及び3項にいう「特許出願」ならばともかく、発明がその特許を受ける権利を有する者の意に反して公表された場合に関する同条2項にいう「特許出願」について、優先権の基礎となる日を出願日と認めることを妨げる理由は何ら存しない。このことは、特許法104条所定の「特許出願」の日は、その出願が優先権主張を伴うときは優先権主張日であるとする判例によっても裏付けられるというべきである。
第3請求原因の認否及び被告らの主張
1 被告ら(共通)
(1) 請求原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本件発明の要旨)及び3(審決の理由の要点)は認めるが、4(審決の取消事由)は争う。審決の認定判断は正当であって、これを取り消すべき理由はない。
(2) 外国における最初の特許出願が特許法30条2項所定の要件を満たすが、同出頭に基づく優先権を主張して日本国においてした後の出願は同項所定の要件を満たさない場合、特許法30条2項の規定の適用を受けられないことは、特許出願者が日本人であっても外国人であっても同じであるから、審決の説示はパリ条約2条に違反しない。
また、パリ条約4条は、優先権の主張を伴う後の特許出願は、その基礎となる最初の出願との間に行われた行為によって不利益な取扱いを受けないことを規定するものであって、最初の出願より前に行われた行為が後の出願にどのような影響を及ぼすかを規定するものではない。
2 被告大原薬品工業株式会社、同東和薬品株式会社、同ソルベイ製薬株式会社
特許法30条2項にいう「特許出願」の日を優先権の基礎となる日とする原告の解釈は、新規性喪失の例外期間を、後の出願の1年6月前まで認めることに帰し、特許を受ける権利を有する者に不当な利益を与えるものである。
第4証拠関係<省略>
理由
第1請求原因(特許庁における手続の経緯)、2(本件発明の要旨)及び3(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。
第2そこで、原告主張の審決取消事由の当否を検討する。
1 本件発明がその特許を受ける権利を有する原告の意に反して引用例に発表されたこと、及び、本件発明が同発表の6月以内である1976年1月2日フランス国においてした特許出願に基づく優先権を主張して特許出願されたことは当事者間に争いがない。したがって、優先権の基礎となる同日が、本件発明が原告の意に反して特許法29条1項3号に該当するに至った日から6月以内であることは明らかである。
2 原告は、本件発明の特許出願については優先権の主張が認められているのであるから、本出願は優先権の基礎となる1976年1月2日にしたものとして特許法30条2項の規定の適用を受けることができると主張し、その根拠として、パリ条約2条及び4条を挙げている。
そこで検討するに、パリ条約2条(1) は、「同盟国の国民は、内国民に課される条件及び手続に従う限り、内国民と同一の保護を受け」と規定している。これを本件に即していえば、特許法30条2項の規定の適用を受けるためには、国の内外を問わず、特許を受ける権利を有する者の意に反した公表があった日から6月以内に特許出願がなされることを要するとした場合、本件発明について最初の特許出願を1976年1月2日にフランス国においてし、後の出願を昭和51年12月28日に日本国においてしたときは、フランス国においては新規性喪失の例外規定の適用を受けられるが、日本国においては同規定の適用を受けられないことになるが、このことは、その特許出願人が日本国民であろうと外国法人である原告であろうと、全く同一である。したがって、本件特許出願については、同盟国の国民である原告に対してもまさしく内国民待遇が行われるのであるから、審決の特許法30条2項についての前記解釈がパリ条約2条に違反するものでないことは明らかである。
また、パリ条約4条A(1) は、いずれかの同盟国において正規に特許出願等をした者は、他の同盟国において出願することに関し、同条約が定める期間中優先権を有することを規定し、同条のBは、「すなわち、A(1) に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は、その間に行われた行為、例えば、他の出願、当該発明の公表又は実施(中略)によって不利な取扱いを受けないものとし、また、これらの行為は、第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。」と規定している。しかしながら、その条項からも明らかなように、これらの規定は、第一国出願の出願人等が条約に定める期間中優先権を有することを定めたものであり、第二国出願の出願日が当然に第一国出願の出願日まで遡及することまでも定めたものではない。この優先権主張を伴う特許出願をどのように取り扱うかは、当該特許出願のなされた国の法律に基づいて決めるべき事項である(このことは、我が国の特許法(昭和34年法律第121号)が最初の出願と後の出願との間に法律改正がなされた場合に、当該出願について出願日を遡及させず、改正法を適用したきたことからも明らかである。)。
ところで、特許法30条2項の規定の適用については、優先権主張を伴う特許出願をどのように取り扱うか明文の規定は存しないが、パリ条約4条のBは、第一国出願の日と第二国出願の日との間に行われた当該発明の公表等の行為により第二国出願が不利益を受けないことを定めたものであって、第一国出願より前に行われた行為により不利益を受けないことを定めたものではないこと、特許法30条2項の規定は、新規性喪失の例外規定であって、優先権主張を伴う特許出願について、同項に規定する「特許出願」は第一国出願の出願日を意味すると解すると、新規性喪失の例外期間を1年6月まで拡大することにより、この規定の趣旨に反して特許を受ける権利を有する者に不当な利益を得せしめる結果となること等に照らすと、日本国を第二国出願とする優先権主張を伴う特許出願については、同項に規定する「特許出願」の日は、日本国においてなされた特許出願の日を意味すると解するのが相当であって、パリ条約4条を根拠としてこれと異なる解釈をする余地はないというべきである。成立に争いのない甲第9号証(染野義信作成の鑑定書)に記載された上記判断と異なる意見は、当裁判所の採用するところではない。
原告は、特許法104条所定の「特許出願」の日は、その出願が優先権主張を伴うときは優先権主張日であるとする判例を引用して特許法30条2項に規定する「特許出願」についても同様に解釈すべきである旨主張するが、特許法104条と同法30条2項とは、その規定の趣旨を異にするから、後者についても前者と同一の解釈をすべき合理的理由はない。
したがって、「本件発明の日本における特許出願は、優先権の基礎となる1976年1月2日にしたものとして、特許法30条2項の規定の適用を受けることができる」という原告の主張は、失当である。
3 以上のとおりであるから、審決の認定判断は正当として肯認しうるものであって、本件発明の特許は特許法29条1項3号に違背してなされたものであるから同法123条1項1号の規定により無効とすべきものであるとした審決に、原告主張のような違法は存しない。
第3よって、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担及び上告のための期間の附加について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、94条後段、158条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 春日民雄 裁判官 持本健司)
別紙A、別紙B